のどかな住宅地を行くと、道は木々に覆われ、黙々と坂道を登る羽目になる。道沿いには川が流れていて、所々に滝がある。ハイキングにはとても心地よいコースだろう。気がつけば、山科の交通喧騒とは懸け離れた奥地へと辿り着いている。そこから、牛尾観音までの参道らしい階段をさらに登ることになる。ちょっとしたB級スポット感のあるオブジェがある。自然に囲まれた中で、遭遇するには怖さもあるが、一見の価値あり。ようやく登りきったと感じられる辺りに牛尾観音はある。空気が澄み切って、京都の他の寺社仏閣とは違った厳かさが感じられる。ここから先は本格的な山道になる。音羽山山頂、そこから大津へと抜けられる。最寄りの銭湯は、東野湯。
源湯の二階にある雑多な部屋、のような店。物質的な雑多さを店内で体感できるだけでなく、知識の雑多さも店主中村Aから披露してもらえるだろう。ここは、彼の増えすぎた私物と知識を売りさばいている店なのである。まず、どうこの空間で過ごしたらいいのか戸惑うことだろうが、自分の興味関心のあるものに手を取ることから始めよう。文学、音楽、ファッション、民芸、映画、芸術、新興宗教。ザ・文系カルチャーの広い守備範囲を持ちつつも、彼が強く関心を抱いているマニアックなモノを布教される。“布教ライン”というコーナーがあり、斎藤環氏の「若者のすべて」の国内流通の半分はあきよし堂が担っているとも噂されるほど、布教に成功している。刺さるひとには刺さる空間と人物、あきよし。最寄りの銭湯は、源湯。
夜景スポットといえば、将軍塚がお手頃であるが、京都のツウが行くのはここである。ほんとうにこんな道の先に、展望所などあるのか…。と不安になってくるような山道を進むと、不気味な電波塔があわれる。そうするとその先に、展望所がある。見渡せるのは、南区と伏見区。高速道路に沿って、オレンジ色の煌めきが流れていく。展望台の真下には、おびただしい数のソーラーパネルが敷き詰められていて、不法侵入者を見張るためか、強烈なライトで照らされている。まばゆい光が視界にちらつき、夜景はあまり楽しむことができない。日中に来た方が、いい景色がみることができる。どちらもおすすめ。最寄りの銭湯は宝湯。
山科の観修寺公園の南側で、山科川と旧安祥寺川の合流する地点がある。みたことがあるような合流地点だなぁと「鴨川デルタ」が思い浮かぶことだろう。ただ、飛び石がないので、反対岸までわたることができない。「鴨川デルタっぽいけど…」と微妙な感想をいだくかもしれないが、わりと落ち着いていてゆっくりできる。デルタに立つと、目の前に日本で初めてできた高速道路の名神高速道が目に入る。起工した地がこの山科デルタ付近であったそうで、少しだけ東にいったところに記念碑がたてられている。最寄りの銭湯は、東野湯。
哲学の道以上に哲学的な雰囲気がする疏水沿いの散策路。散歩する地域住民とごく稀にすれ違うほどで、茂った樹木に囲まれた中、疏水を道しるべに、ひたすら歩き続ける。黙々と自問自答するためには丁度いい環境である。元来た道で帰るのか、行き先の末で帰るのか、道半ば途中で住宅地にのびる小道から帰るのか。そう考えはじめたときが潮時である。きれいな公衆トイレがあるが、トイレットペーパーがそなえつけられていないので要注意。ポケットの奥底にまるまっていたちり紙に助けられることも時には必要なのかもしれないな、と思う。最寄りの銭湯は、東野湯。