下京区高倉通に、天保四年の創業から絶えず人々の節目と行事を支える島津はある。雛人形で多くの人に知られているが、他にも五月人形に迎春飾り、破魔弓、羽子板なども精巧な手づくりの逸品ばかりだ。
今回は桃の節句が近づく時期に伺ったので、大階段を登った先にお雛様がずらり。こんなに沢山の雛人形を一度に見たのは小学生のお雛様フェア以来だったので、興奮でくらくらしてしまう。
縁起の良いもので節目を飾るのは日本に根付いた文化だが、最近はそれも薄れゆくものとなってきている。簡易的に済ませたり、そもそも飾らずだったり。わたしは幼少期お雛様が大好き。おてんばだったけどあの時期だけは、学校から帰ってきてすぐ人形達のお顔を眺めてた。
見た人にはわかると思うが、島津の人形には不思議な生っぽさがある。おそらくそれは匠の技によってなされる曲線や風合いからだろう。子供ころに見ていたら、もっと生きたナニカを感じただろうな。
本多さんは、雛人形につけられるジュエリーの企画開発も行ったそう。お子さんの誕生石で作るジュエリーは、少し大きくなったらブレスレットとして身につけられるものに。
わたしが島津へ伺って感じたのは、お店のしつらえも流石だが、なにより総本店店長の本多さんやお店の方から滲み出る、伝統文化を人の手で伝えようとする固い決意と、細やかな心くばりだった。
良きものは勝手に後世へ残っていくのではない。人の力あってこそ良きままに残される。ひとすじの決意が島津にはあるし、本物を残す力もある。
皆さま、島津に足を運んでみて。きっと驚くし、きっとこれなら飾りたい、と思うはず。
津之喜酒舗
錦市場の真ん中、人々で賑わう酒屋