東洞院通り、日本の美意識を脈々と受け継ぐ漆器のアソベは、創業から200余年を経てもなお、面の美しさを追求している。
アソベには大小様々、そして使いどころも多種多様な漆器が沢山あるが、そのどれもがなにげないこだわりを持っている。絶妙なカーブ、光の中に溶け込む色。
懐石料理屋や割烹、家庭の食卓、花街など、どんな時間とも馴染みの良いアソベの漆器達は、言葉ではなくカタチや質感で、わたしたちに歴史と文化を伝えてくれる。
漆器というと、多くの人はなんとなく、自分とは遠い世界の話と思うだろう。実際漆器は出来上がるまでとても手間暇がかかるので、値段も安くはない。でもアソベに行くとその感覚はちょっと変化する。なぜならアソベのお店では、腰を落とし、私たちの目線に合わせて漆器を紹介してくれるから。素直にかわいいと思うこころも尊重して、普段使いができる漆器も教えてくれる。自分好みを探しにいける、数少ない漆器店だ。
羊羹が日本家屋の仄暗い静かな空間に溶け込むように、漆器もまた、そんな時間と場所に溶ける性質があると思う。いまとむかしでは漆器の使われるシーンも移り変わってきているが、その安心感はこれからも手と唇が確かめ続ける。
漆器のアソベ、折々の節目にこれからも足を運びたい。
津之喜酒舗
錦市場の真ん中、人々で賑わう酒屋