寺町京極商店街の中の蓬莱堂茶舗、200余年、変わらず静かな佇まいで営業を続ける。
足を踏み入れると商店街の喧騒が遠くなり、ふわりと良い香りが漂う。
ずらりと並ぶ甕や木箱も、年月を経てきたものにしか出せない味わいがある。
ここに来るたび、使い込まれた道具が持つ「茶色」の奥深さに気づかされる。ああいうのを本当の意味で手沢と呼ぶのだ。
ここで生まれた蓬莱茶(世間では玄米茶と呼ばれている)は、鼻があってよかったと思うくらい香ばしい。
関西で有名な松茸も、そこまで栄養価があるわけでないのにとても高価だ。
つまり香りの代金があんなに高い。面白い話だと思う。
私たちは大昔から、香るものに弱いんだ。
その点蓬莱茶は、瞬発的な幸せというより日頃の楽しみにできる長期的な香りの幸せなのだから、財布の紐も緩んでしまう。
蓬莱堂のご主人は老舗を40年近く支えてきたとは思えないくらい、柔らかい。
敷居が高いと思われている老舗なのに、ひとたび入ればお茶の前には違いなどない、人というだけですと言わんばかりの姿勢だ。
いつ、どこで、だれと嗜むお茶なのかを聞いて、ベストなものを選んでくれる。
蓬莱堂茶舗は、お茶の葉の向こう側に、それを楽しむ場の空気まで覗いてくれる。
現代の”専門店”の意義はそこにあるのだ。
場所:〒604-804京都市中京区寺町通り四条上る(東大文字町295)
電話番号: 075-221-1215
開催時間: 10:30〜18:30
定休日: 毎月2日・7日・12日・17日・22日・27日
津之喜酒舗
錦市場の真ん中、人々で賑わう酒屋