三条駅から徒歩5分、三条上る恵比須町に『キクオ書店』はあります。壁一面に多くの本が並べられており、見る人を魅了します。今私たち世代の人が読むべき本が多く、アクセスのしやすいお店なので京都に訪れた際はぜひ足を運んで頂きたいです。
店主の前田さんはとても優しく、インタビューも快く受けてくださいました。キクオ書店さんは古本まつりなど積極的に活動されている印象を受けました。いつ訪れても、あたたかく迎えてくれる優しいお店です。
『京都図総目録』1981年刊 大塚隆・著(¥27,500 税込)
京都は平安京が遷都して以来1200年の歴史がありますが、街の様子は戦乱や災害によってその都度変わっていきました。その変わりゆく京都の街の様子を時代ごとに見ていくことのできる資料が古地図です。
この本は実業家であり京都の古地図収集家でもある大塚隆氏が、自ら収集・記録した古地図を総目録として一冊のまとめたものになります。本の中では江戸初期から近代にいたるまでの各時代ごとの京都の古地図が写真として挿入されており、わざわざ博物館に行かずともこの一冊で京都の古地図をザッピングできる優れものです。
京都の発展から乱や大火の痕跡など、都を襲う様々な歴史上の転換点が時代ごとの古地図から伝わってきます。文字だけでは伝わらない京都の街のリアルが、歴史の流れで伝わる一冊です。
『京大絵図』1691年刊 林吉永・作(¥770,000 税込)
お店の奥から持ってきていただいたのは真っ黒な本だと思いきや、ひらいて驚き実は巨大な古地図でした。
京大絵図は名前の通り縦168㎝、横124㎝にもなる非常に大きな絵図です。普段は縦横それぞれ8つに折りたたまれています。そのため案外持ち運びには苦労しない大きさになります。
この本が発行された1691年は江戸時代の前期の頃です。当時の京都では、今の中心市街地である洛中の開発が進み切っていたため、開発の対象を鴨川の東、今の東山区や左京区南部にある耕作地に広げていました。
この古地図は、鴨川の東側が本格的に開発される直前の京都の様子が記された古地図となるため、江戸初期の街を記した貴重な資料になります。
そんな大きなこの古地図ですが、資料として保管するだけでなくその大きさを生かして床の間に飾ったり部屋に貼ったりすると、意外にもインテリアとして部屋になじむ気がします。
『京絵図道法附』1790年頃刊 竹原好兵衛・作(¥88,000 税込)
3冊目も古地図になります。この地図を制作した竹原好兵衛は江戸時代を代表する古地図作家です。地図を作った人を製作者と言わず作家というのには訳があります。江戸時代中期になると製本技術が発達し本を量産することが可能になりました。それまで高価で一部の学者や僧にしか所有されてこなかった本が大量生産されることで低価格化し、一般の庶民も次第に本を買い求めるようになっていきます。
それに目を付けた竹原好兵衛です。彼は地図を情報を記録するものから見て楽しむものへ、学術から娯楽へと昇華させました。そのため、この京絵図道法附をはじめ竹原の作った古地図には彩色刷りのものや名所を細かく地図上に表示したものなど、それまでの地図ではあまり見られなかった手法が用いられ、より見て楽しめるものになっています。製作者と言わずに作家といったのはこのためです。
今回キクオ書店さんで紹介していただいた3冊の中でも見栄えは随一の古地図ですから、見るにも飾るにも最良の古地図と言えそうです。
住所:〒604-8005 京都府京都市中京区 三条上る恵比須町430
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜日
アクセス:三条駅から徒歩5分
電話番号:075-231-7643
町屋古本はんのき
西陣の路地先にある、隠れ家のような古書店