一乗寺駅から徒歩4分左京区一乗寺大原田町に『マヤルカ古書店』はあります。
お店には部屋中多くの本が並んでいます。古書の取り扱いジャンルは、文学、文化、アート、絵本、食と暮らし、自然、民藝。どれも手に取りやすく、装丁も綺麗なものが多くワクワクしながら本を選べるお店です。
2階は新刊コーナーの展開やギャラリーとしても様々な催しをされているそうです。
店主のなかむらさんは、とても優しい印象を受けます。インタビューも丁寧に受け答えして下さり、古本の魅力についてより興味をもつことができました。また訪れたいと思える暖かいお店です。
なかむらさんおすすめの京都本を3冊ご紹介します。
『半日半夜』杉本秀太郎・著(¥770+税)
「半日半夜」は京都出身のフランス文学家、杉本秀太郎が記したエッセイです。このエッセイは著者の身まわりの出来事を中心に、京都にまつわる話がいくつも登場します。第一話の「洛中生息」では、昭和の高度成長で町の様子が変わってしまった京都の自然を緻密に表現し、そこから杉本の真骨頂ともいえる、精緻な中に鋭く深い洞察力と知識を垣間見ることができます。
著者は生家が呉服の仕入れを行う旧家であり、現在は町屋が広い庭園と共に重要文化財に指定されています。著者の緻密な自然描写は生家の庭によって育まれたのかもしれません。この杉本家住宅は現在一般公開されており、誰でも見学することができるそうです。この本を読んだ足で四条烏丸にある杉本家へ行ってみてはいかがでしょうか。
『観光バスの行かない……』岡部伊都子・著(¥500+税)
この本は1960年から2年間雑誌に連載されていた小文を集めたエッセイですが、著者のテンポの良く鋭い文章からは古臭さが感じられません。それがこのエッセイ集の大きな特徴です。
題名の「観光バスの行かない」は、その名の通り観光バスの行かないような京都の隠れた古刹名刹を著者自らの視点で描いたエッセイという意味です。この著者自らの視点、というのがこの本のミソで、著者は自らあとがきで「仏堂よりもキャベツの方が美しく見えたり、」と記しているほどお寺の素人である様です。しかし、その著者の良さが存分に引き立ったエッセイの数々はどれも目が離せないほどに著者の言いたいことが感じ取りやすく、お寺の情景が一気に目の前に広がっていきます。岡部氏の筆致がいかんなく発揮された至極のエッセイ、ぜひ手に取ってみてください。
『京都魔界案内』小松和彦・著(¥350+税)
京都というと雅で美しいイメージばかりが先行しますが、都に雅があればその逆、負のイメージを持つ場所も当然たくさんあるはずです。そうした京都の忘れ去られそうになっている負のイメージを持つ場所について、魔界という切り口で一か所ずつ解説するのがこの本になります。魔界と言っても恐怖の場所といわけではなく、昔の人が思い描く神や仏にまつわる不可思議な場所という程度も意味です。
この本には祇園の八坂神社や清水寺の参道三年坂など、晴れやかなイメージの場所も隠れた魔界として数多く紹介されています。多くの人が知る名所、旧跡にも魔界としてのサイドストーリーが隠れていることを知ることができることもこの本の意外な魅力です。京都観光の際に小ネタや豆知識を披露するのに格好の資料となること間違いなし、必携の一冊です。
住所:〒606-8187 京都府京都市左京区一乗寺大原田町23-12
営業時間:11:00〜18:00
定休日:火
アクセス:一乗寺駅から徒歩4分
電話番号:090-1039-5393
町屋古本はんのき
西陣の路地先にある、隠れ家のような古書店