文政年間創業、寺町通にある藤井文政堂は京都の歴史の生き字引き的古書店です。
扱う古書は仏教書を中心に、中世から近世にかけての手紙や古典籍など古文書まで幅広く取り扱っています。
文政堂の古文書を求めて足しげく通う大学教授や史学研究家も多くいるようです。
6代目店主の藤井佐兵衛さんは古典籍に造詣が深く、お店で伺った古典籍にまつわるお話はどれも興味深いものばかりでした。
藤井さんオススメの、京都にまつわる古典籍を3点紹介します。
『北野神社文書』作者不明(価格は応相談)
北野神社文書とは、京都の北野天満宮にまつわる中世から近世にかけての膨大な数の書類のことで、現在は北野天満宮の他に京都大学や東京大学、筑波大学などの研究機関でそれぞれ所蔵されていることが知られています。
その書類の中でも中世のものは特に珍しく、しばし研究対象となる存在です。
藤井文政堂さんではこの中世の北野神社文書を蔵書として所有されています。
北野天満宮の境内に茶店を出すことを室町幕府の奉行人に願い出る、という内容のこの文書は、中世の寺社活動を知る非常に貴重な文書です。
またこの文書には穴やしわがほとんどなく、500年前のものとは思えない良好な保存状態も見どころのひとつですです。
『離縁状』作者不明(価格は応相談)
この文書は江戸時代の一般家庭で用いられた夫婦の縁を切るのに必要だった離縁状です。
今でいうところの離婚届と同じ性格を持つこの文章は、全国各地どこへ行っても三行半で文章が完結する形式がとられています。
そしてこの三行半から、みくだりはんという言葉が生まれ、今に至るまで離婚を突き付ける際の慣用句的言葉として受け継がれているのです。
全国共通で三行半の形式だったことから、江戸時代には離婚が珍しいことではなかったことが考えられます。
現代の目線では、江戸時代の夫婦は離婚しそうにないと思われがちですが、この文書を見るに江戸時代も自由に離婚する風潮があったのかもしれません。
『遊女の恋文』作者不明(価格は応相談)
遊女の恋文という題名が付けられているこの手紙ですが、遊女は本気の恋文などほとんど書きません。
ではこれは何なのか。この手紙は遊女が自身の顧客に向けて送ったもので、恋文というよりもダイレクトメールといった方が近いかもしれません。
手紙の末文が個人名でなく「親愛なるあなた様へ」という風な類にどの手紙も統一されていることからも、文章を変えず複数の顧客に向けて使いまわしていた可能性が考えられます。
一つの手紙からこれだけ多くの推測ができるこの手紙は、古文書全体の魅力や面白さを象徴する遺産といっても良い気がします。
住所:〒600-8029 京都市下京区寺町通五条上る
営業時間:9:00〜18:00
定休日:日・祝日・年末年始
アクセス:河原町五条駅から徒歩5分
電話番号:075-351-9363
町屋古本はんのき
西陣の路地先にある、隠れ家のような古書店