自分には縁がないと思っていた。京都に来るまで、存在すら怪しかった。なんの話かって?匂
い袋のみを販売するお店の話です。
大人の嗜み「にほひ袋」の専門店、石黒香舗は幕末に創業してからたった一つ、その道を極めている。製造販売まで行う専門店は、ここだけ。本当に。
匂い袋は、香木を小さくしてその後に巾着の中にいれるから、香りが強すぎない。そこが良い。
わかる人には、というか近づいた人には、わかる香り。風が吹いて、ようやくわかるくらい。
なんだか日本人の控えめな性格が垣間見える。
最近街を歩けば、必ず香水の香りが漂う場面に遭遇する。でも香りがキツかったり、「こんな香りがしそう」と淡い期待を抱いていても想像と全く違うツンとした香りがすることも。
香りと言うのは、気に留めていないようで実はかなり大きな印象になっているんだろう。あ、いまあの人と同じ香りの人とすれ違ったな、なんて思うこともあるくらいだ。
石黒香舗の匂い袋は、お客さん自身が巾着用の布と紐を選べるように工夫されている。肝心の香りだって勿論、最高級に上品。
もっともっと知らなかった良い香りを、そしてそれによる良い気分を、一人一人に味わって欲しい。味はしないが、気持ちのよい深呼吸はできる。
わたしは耐久性のあるものが好きだ。物質としての耐久性の話ではない。どんな時代にもウケる、本質の耐久性のことだ。
今日の最新は、あすには最新ではなくなる。だけどすでに古いものごとなら、これからも鮮度に変わりない。
懐かしいものは、明日も来年も10年後も懐かしい。そういう耐久性のあるものが好きなんだ。
石黒香舗は「香りの専門店」を170年近くもやっているから、それをよく体現している気がする。
香りは特に、「懐かしい」と仲良しだしね。
どこか懐かしくて、ほっとする石黒香舗の匂い袋。もはやストレートにご推薦。
津之喜酒舗
錦市場の真ん中、人々で賑わう酒屋