新京極、六角通りを通りがかれば必ず目に留まる店がある。
新しいビルたちに囲まれた中にたった一つの木造建築。
職人にうなぎを道に向かって焼かれては、立ち止まらずにはいられない。
京極かねよは、大正初期から一子相伝で熟練の技が受け継がれる鰻屋だ。
戦前の火災で建物が焼失したとき、当時の社長が持って逃げたのは現金ではなく創業から継ぎ足しで守られてきた秘伝のタレ。
かねよが大事にしていること、商売の本質を教えてくれるエピソードだ。
ここの名物は、こだわって焼かれたうなぎの上に丼からはみ出るほどのずっしりとした京風卵焼きが乗った”きんし丼”。
これをめがけて京都に足を運ぶ人もいるほど、言わずと知れた看板メニューだ。
料理が運ばれてくる間のうずうず落ち着かない気持ちも、ぐうぐうなるお腹も、きんし丼がやってくれば全て吹っ飛んでしまう。
卵焼きの美しい黄色、それをめくると見えるタレを纏ったうなぎの照り、ああなんて完成されたご褒美なのか。
あれほど贅沢な食べ物をわたしはまだ知らない。
かねよで働く人たちは、みな同じ志の元に仕事をしているように見える。
自分の人生では何千何百と同じものをつくっているが、これを食べるお客さんにはたった一度のことかもしれない。手は抜かない。
そういう姿勢がここの料理からは垣間見えるのだ。
たかが食事、されど食事。長い人生で食事の時間は膨大な量になる。
京極かねよは、そのたった一度の食事が依然として一大事であることを教えてくれる。
場所:〒604-8034 京都府京都市中京区松ケ枝町456
電話番号: 075-221-0669
開催時間: 昼の部 11:30〜16:00(L.O 15:30)
夜の部 17:00〜21:00(L.O 20:30)
定休日: 年中無休(改修工事のため一時休業日あり)
津之喜酒舗
錦市場の真ん中、人々で賑わう酒屋