叡山電鉄一乗寺駅から歩いて3分、ユニークなおじさんのイラストが描かれた看板が目を引きます。
ウナギの寝床のような細長い店内に入ると中は天井まで本の山が続くザ・古書店という雰囲気。どこか懐かしい本の香りが店内が広がります。
ご兄弟でお店を切り盛りされている萩書房さんは創業1986年、今年で35年目。
映画やカメラなど芸術関係の専門書が多い一方、漫画や小説などの本も多く取り揃えられており、本選びに迷います。
店主の井上さんは本を勧めるのではなくお客さん自ら本を見つけ出してもらうことを大事にしているため、今回は私が萩書房さんの蔵書の中からおすすめしたい本を3冊紹介します。
『京洛の四季』1995年刊 藤慶之、太田垣實・編(¥800 税込)
京都の地には洛中洛外を問わず風光明媚な名所旧跡が存在します。そして、春の桜から雪景色の山まで四季の景色は画を描くうえでは欠かせません。
これら日本画のモチーフが一通り揃う、それも小さな盆地に数えきれないほどあることが京都の画壇の礎となっています。
上村松園、黒田清輝をはじめとする日本を代表する近代画家たちが描いた四季の京都をフルカラーでまとめたのがこの京洛の四季です。
261ページに及ぶこの本には総勢61人の画家の絵が四季ごとに収録されており、都市化の進む前の街中をモチーフにした絵も多くあります。
京都の四季を絵画から見ることで新たな発見があるかもしれない、そんな一冊です。
『若冲と京の美術』2017年刊 細見美術館・編(¥700円 税込)
京都出身の画家として今や不動の人気を誇る伊藤若冲ですが、人気が高まったのはここ最近の話です。この本は京都岡崎にある私立ミュージアム細見美術館で開催された、伊藤若冲の絵画作品を中心とした展覧会の図録です。
細見美術館は細見家という茶人一家のコレクションを展示する館なのですが、細見家は伊藤若冲がまだあまり有名でなかった頃からいち早くその作画を評価し、積極的に蒐集していたことで知られています。
伊藤若冲の人気が出始めた頃から、満を持して若冲の展覧会を行うようになり、その度に観覧客で満員となっています。
若冲の鮮やかな絵画と若冲を育んだ京都の歴史を表す美術品の数々が収録されている図録は、あでやかさや美しさが光る一冊です。
『冷泉家の至宝展』1997年刊 NHK出版・編(¥800円 税込)
冷泉家は日本史教科書の中で、平安時代歌人の藤原定家を祖とし歌道を家業とする公家の一つに挙げられています。その冷泉家は創家から800年たった今でも、歌道を受け継ぐ家として京都今出川に存在しているから驚きです。
同志社大学に囲まれるようにして立つ冷泉家住宅は完全な形で残る日本で唯一の公家屋敷として国の重要文化財に指定されています。
屋敷内には御文庫と呼ばれる蔵があり、保管されていた古文書、古典籍類は数万点にも上ります。
現在でも歌会をはじめ当主らにより公家の伝統を受け継ぎ続ける冷泉家の、所有する文化財を公開した初の展覧会が90年代後半にかけて全国の博物館で行われました。
その際の展示品をまとめた図録がこの本という訳です。冷泉家の所有する平安時代の息吹を感じ取るための一冊です。
住所:〒606-8115 京都府京都市左京区一乗寺里ノ西町91-3
営業時間:12:00~20:00
定休日:不定休
アクセス:叡山電鉄 一乗寺駅から徒歩5分
電話番号:075-712-9664
町屋古本はんのき
西陣の路地先にある、隠れ家のような古書店